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よもやまコラムYOMOYAMA COLUMN

航空・科学技術

空を飛ぶ海の生き物たち (2)魚のグッピー

P20200901 Guppy poisson.jpg前回はエアバスの大型貨物輸送機のベルーガを紹介しました。シロイルカに似ているのでその愛称が付けられたものです。そして今回はグッピーです。メダカの仲間か熱帯魚か、とにかく金魚屋さん、熱帯魚屋さんなどで見かける小さなアレです。左の写真のものです。

実はエアバスはベルーガの前に同じように胴体の大きな形の大型貨物輸送機を使っていました。兄貴分といいましょうか先代といいましょうか、それがグッピーGuppyです。

大型貨物輸送機のグッピー・シリーズはアメリカで生まれました。20世紀中盤の宇宙開発競争の真っ只中のことです。アポロ計画に使われたサターンVロケットなど、ものすごく大きな宇宙分野の機器を輸送するのに必要となりました。

そこで最初に作られたのがボーイング社のB377ストラトクルーザを改造したB377-PGです。後ろのPGの「G」はグッピーの「G」ですが、その前にある「P」は、「プレグナント」、つまり妊娠している状態を表す言葉の「P」です。要するに「妊娠グッピー」・・・胴体が膨らんだ形だからでしょう。なるほど、ネットで画像を検索してみると、お腹の大きなグッピーのお腹はホントにぷっくりしていました。しかしなんというネーミング・センス。

このプレグナント・グッピーは1962年に初飛行をします。その後サイズを小さくしたミニ・グッピーも作られました。ミニ・グッピーは1967年に初飛行をします。

P20200901 Guppy en vol.jpg

そしてスーパー・グッピーの到来です。当初は377-VPG (Very Pregnant Guppy) と呼ばれましたが、のちに377-SG(スーパー・グッピー)と名前が変わります。1966年から運用されました。さらにターボプロップ・エンジンを搭載した377-SGT(スーパー・グッピー・タービン)が製造されます。

377-SGTは1970年代初頭に最初に2機作られ、欧州のエアバス社が大型航空機部品を運ぶのに利用しました。アメリカの飛行機を欧州が飛行機を作るために利用する構図は興味深さが絶妙です。そのエアバス、更に2機欲しいとアメリカ側にコンタクトし、ライセンスを受けてフランスのUTA社の製造部門がフランスで製造します。1980年代初頭に完成しました。

P20200901 Guppy open.jpg

こうしてスーパー・グッピー・タービンはやがてベルーガに代替わりするまで使われました。現在フランスでは製造番号0002のSuper Guppy 201が、トゥールーズ・ブラニャック空港にあるアエロスコピア航空博物館に展示されています。

文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)

No:Y20200901-01