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ESAの将来系輸送プログラム2つの進捗:テミス再使用型ロケット段の宇宙飛行実証機開発とSABLE複合エアーブリージング推進機

P201220 Themis.jpgTHEMIS再使用型ロケット段開発契約

2020年12月15日、欧州宇宙機関(ESA)はアリアングループ社にテミス(Themis)再使用型ロケット段の宇宙飛行実証のためのプロトタイプ機の開発・製造を発注した。初期フェーズの契約金額は3300万ユーロとのこと。

Themisは、液体酸素・メタンを推進剤に用いるプロメテウス・エンジンを搭載する再使用型のロケットを目標に研究開発が進められているもので、仏国立宇宙研究センター(CNES)とアリアングループ社が協力して発足させた開発推進プラットフォームのアリアンワークスが進めてきた1段版ロケット段実証機である。

先月(2020年11月)初旬には実物大の機体タンクを垂直に立てる試験に成功している。(フラスペ ニュース 2020年12月1日付「アリアンワークス、テミス(Themis)の直立試験に成功」https://www.france-space.com/news/themis.html 参照)

今回の契約は実際にインフライト・モデルの開発に入るためのもので、宇宙飛行実証は2023年を目指している。またスウェーデン・キルナのエスレンジ宇宙センターでの飛行実験およびそれに関連する業務委託も委託された。


SABLE複合エアーブリージング推進機プログラム

2020年12月14日、ESAはサーブル(SABLE:Synergetic Air-Breathing Rocket Engine)複合エアーブリージング推進機のシステム研究の結果について記事に挙げている。

SABLEプログラムは2030年以降の欧州の衛星打上げ能力を補完する目的で考案・研究されているもので、イギリスのリアクション・エンジンズ社が中心となり進められてきた。

飛行設計は、水平離陸で出発し、およそ高度25Kmまでは吸い込んだ大気の力を利用するジェットエンジンの助けを借りて上昇し超音速まで達する。そしてその後は従来のロケットエンジンの仕組みに切り替えるという形である。研究では上段2段が宇宙に行く形(TSTO)まで調べられた。出発地はギアナ宇宙センター(CSG)の設定である。

リアクション・エンジンズ社に加え、アリアングループ 社が極低温推進剤技術や成層圏を超えた空間での飛行について専門能力を提供し、ブライス・スペース&テクノロジー社は2030年以降の打上げサービス市場について分析を行った。

報告された研究結果について、ESAの中軌道(LEO)以遠宇宙輸送の責任者は、現在のSABLE技術をベースにした再使用型打上げ機の技術的、経済的課題が明らかになったと話している。

ESAでは、このSABLEプログラムをESAの将来ロケット準備プログラムとして継続して進めていきたい意向とのこと。



ソース:ESA、アリアングループ(15/12/2020)、ESA(14/12/2020)

文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)

No:N20201220-01