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アラブ首長国連邦(UAE)の宇宙プログラムとフランス

P190623 satellite eurospace.jpg2019年7月17日、フランスの経済新聞ラ・トリビューンがウェブ版でアラブ首長国連邦(UAE)の宇宙プログラムについて中東研究専門家が書いた紹介・分析記事を掲載している。

日本では昨年(2018年)、HIIAでUAEのハリファサット(KhalifaSat)を打ち上げているのでその流れでUAEの情報に詳しい方も多いだろう。それでもこの記事はフランスとUAEの関係について数点書かれていることや、ちょうど先週(2019年7月10日)、残念ながらヴェガ・ロケットによる打上げの失敗でUAEのFalconEye-1衛星が失われてしまったということもあったので、少しUAEの話も載せようとこの題材を選んだ。記事は中東研究財団(FEMO)協力研究員のヴェスピエール氏によるものである。

その記事をまとめると以下のようになる。
直近のイベントはUAE初の宇宙飛行士誕生である。2019年9月に情報技術博士で空軍パイロットのハッザ・アル=マンスーリ宇宙飛行士がソユーズでISSミッションに参加する。アラブ地域ではサウジアラビア人宇宙飛行士(1985年、スペースシャトル)、シリア人宇宙飛行士(1987年、ソユーズ)が誕生していたが、その後今回のアラブ諸国出身の宇宙飛行士誕生までには30年以上かかっている。

しかし、これまでUAEは宇宙分野に何の力も入れていなかったわけではない。特に2000年代に入り宇宙プログラムの推進が活発となり、10年前くらいからそれが具体的な結果となって表れてきた。2009年、2013年には韓国との協力で開発製造したDubaiSat-1、DubaiSat-2をロシアのロケットで打上げている。また前述のように日本との協力で2018年に打上げられたハリファサット・プログラムもあった。

今回打上げ・運用予定だったFalconEye-1は、同じく年内(2019年)の打上げが計画されているFalconEye-2とペアで利用される衛星で、フランスのエアバスDS社、タレス・アレニア・スペース社が協同で開発製造し、提供したものである。2機はフランスの軍主導、民生利用ありのデュアルユースの衛星システム「プレイアド(Pléiades)、英語読みプレアデス」の派生型の光学衛星である。

さらに、UAEは火星探査も目指している。2020年打上げ、2021年火星軌道到達の予定の火星探査機「al-Amal (希望の意)」のプログラムが進められている。2021年にUAEは建国50周年を迎えるためそれに照準を合わせているとのことである。

これらプロジェクトを実現するために組織も整備されてきた。2014年にはUAE宇宙機関(UAESA、本部アブダビ)が発足し、またドバイには宇宙センターが準備されている。

そんな中、宇宙分野全般の成長、そして火星探査プログラムを鑑み、UAEはフランスと協力合意を結んでいる。
UAESAが始動したすぐ後の2015年、UAEとフランスは特に地球科学、宇宙科学、テレコム分野、人材交流を特筆する宇宙協力合意を結んでおり、また昨年(2018年)に仏国立宇宙研究センター(CNES)はアブダビにCNES自身のUAE代表事務所をオープンした。これらにつきCNES、フランス側は「CNESはUAESAと宇宙協力合意を結んだ域外の宇宙機関」「CNESはUAEに事務所を持った初の外国の宇宙機関」と謳っている。

これら宇宙プログラムの推進によりUAEの航空分野や画像・映像配信分野での競争力、衛星画像による国境監視が強化されるであろう。さらに対外的には科学の発展に対するアラブ諸国の貢献が見せ、またUAEは世界にオープンな国というメッセージを送るという狙いも含まれている。

UAEといえば石油資源による国の豊かさ、観光、文化、またアラブ地域の緊張中での軍事と外交、といったワードが挙げあってくるが、これから将来にかけ技術、特に宇宙技術もそれらワードの中に加わってくるだろう。


ソース:La Tribune (17/07/2019)、 仏外務省(09、25/10/2018)、他

文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)

No:D201907318-01