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wrote: 2019/09/03
update: 2019/09/03
2019年8月29日、トランプ米大統領はアメリカ宇宙部隊(US-Spacecom)を設立すると発表した。フランスでも2019 年7月13日にマクロン大統領が仏空軍の中に宇宙部隊を発足させると演説し、その後具体的な計画も明らかにされ、9月1 日からトゥールーズを拠点として始動し始めることになった。
これらについてフランスの宇宙専門家はどのように見ているのか。2019年8月30日、仏戦略研究財団の宇宙分野の専門家グザヴィエ・パスコ氏はフランスのメディア「レクスプレス」のインタビューで以下のように答えている(要約)。
アメリカが宇宙軍を持つのはこれが初めてではない。2002年に廃止されたが1980年代から米宇宙軍は存在していた。今回再び設立となったのには2つの要因がある。1つはトランプ大統領の、オバマ政権時にはやらなかったことをやりたいという意思、もう1つはアメリカの衛星は大いに他国(主に中国、ロシア)のミサイル攻撃の標的になり得る可能性が増してきたことである。実際オバマ政権下でも米政府は衛星防衛プログラムを考え始めていたとも言われている。今回のSpacecomの発足では、まず衛星による宇宙監視体制の強化が見込まれるだろう。
(中略)
7月13日にマクロン大統領が演説した仏宇宙部隊について:フランスは欧州の中でも軍事宇宙分野が最も発達している国である。これは核抑止力を持つのと同じ構図である。しかし抑止力の点だけでなく、フランスは欧州の中でも最も他国に軍事介入している国であり、その際自国軍内での通信は必須である。そのためには通信を可能にする宇宙インフラも強化していかなければならない状況だということであろう。
マクロン大統領の発表が意味するものは、現在フランス政府も宇宙軍事での脅威は高まっていることを認識しており、それらに対処していかなければならないと考えているということである。
将来的に宇宙が実践の場になるかという質問は正に焦点である。もし軍事対立が宇宙を戦場として必要とする場合もあるかもしれないが、一方で宇宙には各国間、国際間での相互依存の形が存在している。それがこの質問に単純には答えられない理由である。
ソース:L'Express (30/08/2019)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:D20190903-1
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。