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イタリア:Ital-GovSatComプログラム着手の契約署名

P190324 VegaC.jpg前回イギリスが国内の宇宙産業を発展させるために取り組んでいるLaunchUKについて進捗を紹介したので、今回はイタリアの場合を取り上げる。ちょうど国内・EU内に関わるニュースがあったのでそれを取り上げたい。

2019年7月23日、タレス・アレニア・スペース社イタリア(TASイタリア)とテレスパッツィオ社が共同で結成したスター・アライアンスは、イタリア宇宙機関(ASI)と衛星通信システムItal-GovSatComの開発初期段階に関する契約を結んだ。


スター・アライアンスとは親会社を共にするTAS(タレス社67%、レオナルド社33%)、テレスパッツィオ(レオナルド社67%、タレス社33%)が、それぞれの持つ専門性を出し合って航空宇宙、安全保障、防衛市場で技術力や品質も高い製品・サービスを提供していこうという狙いのもと2005年に結成された組織である。

この契約はイタリアが自国の宇宙経済を発展させようと取り組み始めた「スペース・エコノミー」計画の第1歩でもあり、官民双方が参加する形をベースとしている。契約案を練ったのはイタリア経済発展省(MISE)、ASI、イタリアの12の地方自治体であった。


開発・実現はスター・アライアンスのTASイタリアが指揮を執り、スター・アライアンスのTASイタリアやテレスパッツィオのほか、SITAEL社、スペース・エンジニアリング社やイタリア内の多くの中小企業らも参加して行われる。開発・運用されるItal-GovSatCom衛星は同じくイタリアのアヴィオ社が製造するヴェガ・ロケットで打上げ可能な仕様のものになるという。タイミングを鑑みると、それは現在運用中のヴェガでなく改良版のヴェガ-Cロケットでの打上げが想定されている。


さて、ここまではイタリア国内の成長のための努力の話であったが、このItal-GovSatComプログラムにはもう1つの大きな要素がある。それがEUのGovSatComプログラムである。


P190725 EDRS.jpgEU/ECはGNSSのガリレオ、地球観測のコペルニクス、宇宙高速データ通信のEDRSといったプログラムを進めているが、その、宇宙分野でも欧州としてのシステムを作り域内で共用して発展させようという流れから、2013年、政府系宇宙通信のためのGovSatComプログラムに着手することを決めた。


GovSatComプログラムはEU諸国、EU機関・組織の安全保障、防衛、人道的援助、救難支援、外交など様々なミッションに利用できる衛星通信システムの提供しようというものである。そして欧州防衛機関(EDA)、欧州宇宙機関(ESA)も協力支援するプログラムとなった。信号は暗号化されたものを取り扱い、サービスは軍民両用である。


しかし、それぞれの加盟国はたとえEUに加盟しているとはいえ自国の防衛戦略があり、通信においても自国のシステム、保護化された信号を用いたいという意思がある。つまりこの分野はEUで1つにまとめることは簡単ではない。そのため、参加したい国が参加したい分を貢献して参加する、という形で進められている。


そして今回、イタリアはEUのGovSatプログラムにより具体的な参加貢献をするためItal-GovSatComプログラムを進めていくことにした。その狙いについてTASイタリアのプレスリリースでは「Ital-GovSatComプログラムによってイタリアは政府系通信の戦略的分野での立ち位置を確保できることになろう」と書かれている。


このように、2019年7月23日のイタリアにおけるItal-GovSatComプログラムにおける契約署名のニュースには、国内産業の発展を狙う部分とEUの中でのイタリアの意向の要素が含まれている。



ソース:TASイタリア(23/07/2019)、EU(20/05/2019)、A&C(12/09/2017)、他

文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)

No:D20190725-01