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wrote: 2019/08/30
update: 2019/09/01
1つ前の「解説・特集」で挙げた先月(2019年7月11日)に起こったガリレオの不具合についてフランスのメディア「レクスプレス」が挙げた複数の関係者・専門家の意見を交えた論説記事の論旨の続きです。
3/ EUはもう不具合に目を背けてはいられない
先月(2019年7月)の不具合の対処が曖昧だったと評されるが、実はこの曖昧な対処はこれが初めてではない。2014年、完全運用版(FOC)の最初の2機が打ち上げられた際EUは大喜びだった。(ただし予定していた軌道には投入されなかったが、衛星を完全に失ったわけではなく利用は可能とされた経緯もある。)しかしその頃から原子時計に問題があると警鐘を鳴らす専門家もいた。そして2016年に原子時計の不具合が表面化しそれは伝染病のように次々と起こる形になった。結局その問題をクリアするのに3年かかっている
4/ 今回の不具合はEU/ECにとってもタイミングが悪い
今回の不具合はEU/ECにとってどうもタイミングが悪い時期に起こってしまった。この秋EUは2021-2027年の宇宙予算を確定しなければならない。2019年春の段階では160億ユーロが見込まれている。その半分以上がガリレオと補完システムエグノスに割り当てられるものだ。しかし、この不具合が起こり、調査委員会が発足した今、改めてその額の確保に尽力せねばならなくなるだろう。さらにプログラム予算の12%を拠出していたイギリスという出資国もいなくなることになる。
これらのことからEU/ECはもうガリレオの問題に目を背けてはいられない状態に陥っている。
以上が同記事の論旨である。
ソース:L'express (26/08/2019)
文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)
No:D20190830-2
運営者 PROFILE
フランスの大学院で仏欧宇宙産業政策を学び、その後現地で同分野の調査研究に従事。フラスペを立ち上げ「フランス・欧州宇宙分野」をメインに情報を発信。
宇宙業界のほか航空、科学・技術・イノヴェーションに関する政策・動向の調査研究なども手がける。また在仏日系企業や日本人家庭のヘルプ業務も受託。