日本語で読めるフランス・
ヨーロッパ宇宙分野情報サイト

CLOSE

解説・特集COMMENTARY / FEATURE

Pick Up 記事

宇宙競争が見せる戦略の複雑化-CNES総裁付き軍事顧問の見解

P190326 Geneve.jpg2019年3月18日〜29日まで、日本をはじめ世界25ヵ国が参加する宇宙空間での軍備拡散競争防止についての国連の専門家会議がジュネーブで開かれている。この機会にフランスの国際戦略関係研究所(IRIS)は、仏国立宇宙研究センター(CNES)の総裁付き軍事顧問であり、IRISの協力研究者でもあるフィリップ・ステイニンジャー氏の宇宙軍備拡散競争についての見解をインタビュー形式で記事にしている。

その中で同氏は、アメリカ・中国間の関係やアメリカとロシアの中距離核戦力全廃条約(INF条約)の破棄などの現在の世界情勢の中、今回のジュネーブでの会議では本当に宇宙軍拡防止条約のための何らかの確固たる合意を得られる機会となるのだろうか、という質問に対し以下のように答えている。

(抜粋訳)核拡散防止の合意を得るための努力はこれまでも行われてきたが、大国の対立関係は強く確固とした成果を得ることはできなかった。今回も具体的に合意に向かって進むことは難しいであろう。トランプ大統領自身も「宇宙でも優勢でいる」と口にしている。しかし、そのアメリカの態度が逆に他の国々を団結の方向に向かわせることになるかもしれない。また、宇宙分野はかつてないほど戦略的な部分だという意識が間違いなく共通の観念になってきたこと、さらに今日、宇宙分野に進出する国の数はますます増えており、お互いの宇宙に関する規定への相互依存関係も高まっている状況も合意のために前進する要因の1つとなろう。今回の会期中に合意を得ることはないだろうが、宇宙軍拡防止条約の基本となる部分を特定できるかもしれない。

その他、同氏はアメリカの宇宙軍についてや、アメリカ、ロシア、中国の宇宙軍備競争は冷戦時代の再来といえるのか、その中で欧州はどの立ち位置を取っていくか、などの質問に答えている。



ソース:IRIS(20/03/2019)"La compétition spatiale, reflet d'une complexification stratégique ?"




文:浜田ポレ 志津子(フラスペ)

No:D20190326-01